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お芝居についての向き合い方

生徒にレッスンをしていて、気づいたことががある。どうも「うまくいかない」「よくならない」という人たちに、ある共通項があることを。練習が足りないのではない。レッスンでは皆、同じことをやっている。一体何が足りないだろうか。「勉強法」と「考え方」が足りないのである。芝居というものは、数字で結果がわかるものではなく、(お客を呼べるという数字はあるが)人の気持ちのさじ加減で評価されることも多い。そして確固たる正解がない。ここが「うまくいかない人」を量産することになる。逆に「うまくいっている人たち」は「うまくいってない人」の原因が全くわからない。ここの差をどう埋めるのか。私の学生時代の恩師は「お芝居という世界は圧倒的に不公平だ」と言っていた。もちろん「できる人たち」が圧倒的に有利であることは確かだ。しかし、しかしだ。「できる」と「できない」の差を限りなく埋めるということはできるのではないかと思う。ある一定の技術力をつけるという意味で。お芝居は誰がやってもいい。本来ならば誰も役者の技量を否定することはできない。だが、プロフェッショナルや商業といった視点からすると別である。金銭が発生することにより対価を求められるからだ。その対価とは何か。集客か、技術力か。それとも人間的魅力なのか。ケースバイケースだけれど、何かしら「与えなければならない」のである。昨年から「声優になりたい」という相談をたくさんいただく。その度に、私は意地悪だけれどもこう言わせてもらう。「同人でやればいいじゃない。すぐにでも声優になれるよ」と。逆に「声優になります」と言い切った人には、私の持っている技術や心得はいくらでもサポートします。「自分じゃない人間になれるから芝居が好きだ」という人がいる。かつても私もそうだった。が、そういう人の芝居はだいたい魅力がない。どんなセリフを借りようが、どんなキャラクターを借りようが、自分は消せない。よくある「自分を出せ!」と言われる人、そういうことですよ。自分を愛せない人が、人の人生を生きたところで面白いわけないでしょうが。鏡の法則という言葉をご存知だろうか。今、見えている世界は全て「自分の現在の状態の鏡」です。

青空に搖れる街灯

日々是

やっと春っぽくなってきた。やはり冬というものは、低血圧の所為もあるけれど、身体が全然動かないのである。生活もあまり褒められるものではなかった。哀しみが続く。先週から大学の恩師か立て続けに旅立たれた。宮村先生、龍先生。宮村先生は、私の演技演出の基礎をバリバリに叩き込んでくれた。現在の私のレッスンでも取り入れているメソッドがある。その他に彼が残してくれたものは、たぶん歌謡曲であろう。和田アキ子の「古い日記」、山口百恵の「プレイバックpart2」、円広志の「夢想花」などは、カラオケで歌えと言われたら、たぶん私の同期はみんな歌えるだろう。なぜならば授業でこれらの曲を使って、ずっとずっと有酸素運動をやっていたからだ。だから、これらの曲を聴くと、なわとびと踏み台昇降運動を思い出してしまう。シェイクスピアの「夏の夜の夢」が学外定期公演で、シアタードラマシティ、東京芸術劇場で行われた。どちらもキャパ500人くらいだったと思う。その舞台に立つ為に、2時間を超える舞台に立てる身体にする為に、ひたすらトレーニングの日々だった。私たちの学年と宮村先生はウマが合ったのだと思う。そういう意味では結束力が他の学年とはえらく違った。みんなで行った鶴橋の焼肉はまだ忘れられない味である。龍先生は、ダンスの先生だった。宝塚出身でシアタージャズを教えてくれていた。そして、いわゆるスパルタ教育をする人でもあった。現在の教育では是非はあるだろうけど、あの厳しさは未来を生き抜くためには必要だったと思う。タバコを薫せながらカッカッカッと笑う人であった。そしてお茶目な人でもあった。こんなとこが愛されるんだなと思った。宝塚出身は伊達ではない。二人の遺してくれたものは、私にとって偉大だ。お芝居を生業にできているのは、彼らのおかげである。悲しいなぁ。哀しいなぁ。また会いたかったなぁ。きっと私ができることは、この仕事で生きていくことなんだろうなぁ。

朗読劇『かわたれのアルビレオ』

ある秋のことだった。先輩が、「ミルノぉ、お芝居がやりたいよ」ランチ中の話だった。同じ時期に、別の子から、「お芝居やりたいんだよ、ミルノ」LINEでのやりとりだった。なぜ私に言うのだ。別に私はプロデューサーでないし、劇団をやっているわけでもない。だけど、なぜ私に言ってくれたのだろう。と、ふと考えた。もしかしたら、神様がやれと言っているのかもしれない。思い返してみれば、大学生の時に学園祭で舞台公演のプロデューサーをやった。そういえば、やった。なんかテンパって、この時にピアスの穴開けた気がする。私は実は、人望の自信が全然ない。ご飯を誘うのだってそれはそれは勇気がいるのだ。だから不安だった。人が集まってくれるのか。そんな想いを抱えて、先輩と企画を立ち上げた。恐る恐るお願いしたい人たちに声をかけた。最初にお願いした人には断られた。ああ、この断られるのが恐怖なのよね。でも、やりたいと言ってくれた人もいた。そしてなぜか巻き込まれた人もいた。脚本もずっとお願いしたい人にお願いできた。今回、この企画に関わる人たちすべてが、大阪芸大出身者です。もともとそんなコンセプトで人集めしたところもあるけど、先輩が演出できるし、キャストはブランクある子もいるけど、芝居やってた仲間だし、劇場は同期が経営してる、いろんなご縁が重なってこの企画は始動しました。もう一度芝居をやっていいと思う。好きなことをやめなくてもいいと思う。関西に住んでることを言い訳にせず、子供がいることも言い訳にせず、仕事があることも言い訳にせず、じゃあ、どうやって乗り越えてみせようか。挑戦の作品です。ぜひ観ていただけると嬉しいです。